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今日は所謂クリスマスで、ダンテは夕方頃から「知り合いにパーティーに呼ばれてるんだ、行ってくる」と言って出掛けてしまった。いや、本当はバージルも誘われていたのだがにべもなく断ったのだ。
「…俺が行ったところで何の面白味もあるまい」
これが本音半分。もう半分はとてもではないが口にできるようなものではなかったので、バージルはそのまま(こんな日に赤いコート着ているとまるでサンタの仮装のようだ、と思いながら)ダンテを見送り読みかけの本を手に事務所のソファへ戻ったのだった。
本当は、ダンテが自分の知らない「誰か」と楽しそうにしているのを見たくなかったのだと、自分を見ないダンテを見るのが嫌だったのだと、嫉妬しかできないであろう自分が嫌だったのだと、バージルは痛いほどよく分かっていた。

「……馬鹿馬鹿しい」

自分に向けてそう吐き出し、ちっとも読み進まない本を閉じると正確さを欠いた時計に目をやる。もう日付は替わろうとしていてこのままだとおそらく愚弟は朝まで帰らないだろうと鼻を鳴らし、待っていてやる義理はない、とばかりにバージルは寝る支度を始める。
鍵を掛けないのは無用心かとも思ったが、鍵を持ち歩く習慣のないダンテが帰った時にドアが開かなければ間違いなく破壊されるであろうことは目に見えていたので、鍵は掛けずに置いた。そして自分の部屋にも鍵は掛けず、灯りを落としてバージルは何事もなかったかのように眠りに落ちる。

Merry Christmas

ガタン、とドアが開くには少々派手な音が階下から響く。次いで何かが壊れるような音がして、ダンテの口汚い罵声が聞こえる。
やれやれ、とバージルは上着をとると階下の事務所に降りる。そして途方に暮れたようなダンテを認めると肩だけで溜息を吐き、傍へ近寄る。
「……本当は」
ダンテが床を見詰めながらぼそりと呟く。床には割れたボトルの破片と、赤いワインが広がっている。続きを促すでもなく待っていると、泣きそうなくらいに揺れる瞳がバージルを捉える。
「本当は、あんたと一緒に行きたかったんだ」
「…そうか」
少し意表を突かれたように瞬きを繰り返すバージルを見詰め、「あんたと一緒が、良かったんだ」と拗ねたように呟き俯いていくダンテの可愛い旋毛を見詰めながらバージルは「そうか」と再び短く応え、しかし困ったように微かに笑みを浮かべるその顔を、残念な事にダンテは見ることができなかった。



きっと3ダンテは友達というか顔見知りなんかとクリスマスだなんだってどんちゃん騒ぎをするんだろうなー、と思っていたら降ってきた話。
顔見知り達を無碍にすることもできないし、でもバージルとも一緒に居たいし、きっと内心気が気じゃないんじゃないかしら、と。思ったんですが、気が気じゃない部分はうちのキャラと迎合できなかったので切り捨てました…
ワインはね、本当はバージルの部屋にこっそり入って「メリークリスマス!」ってやりたかったんですよ!
パーティーのお零れですけどね!
バージルはそれを見越して鍵を開けてました。ここで説明してもねえ…